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2011年6月15日 (水)

「28項目の教訓」に答えることが、原発再稼動の必須条件

今、定期点検で停止中の原発を再稼動できないことが問題となっていて、産経新聞はこんな社説記事を書いています。

広がる電力不足 原発再稼働で危機回避を

経済のためには、原発の再起動が必須という論調で、安全性を高めて地元の人の理解を得るにはどうすればいいかという問題は一切無視するヒドイ社説記事だと思いました。まあ、名前のとおり産経新聞は「人の命よりも経済が大事という新聞」ということなのだと思います。

で、再稼動にあたって地元の理解を得るにはどうするかについて、経済産業省は、首相自らが地元を説得すればいいと考えているようです。

原発再稼働、首相自ら地元説得が必要…経産相

総理大臣がお願いすれば、済むような簡単な話ではないのは誰でもわかると思います。今回の福島原発の事故により、原子力発電所は、原発の交付金の恩恵を受けていない、原発から数10キロ(あるいはそれ以上)の地域に住んでいる人の生活を壊してしまうような甚大な被害を及ぼす可能性があることがわかり、このことが、今までは想定されていなかったわけなので、原発の再稼動に当たっては今まで以上の安全性対策をすることを約束しないと、再稼動にあたっての国民の理解は得られないと思います。

そこで、どうすべきかについてなのですが、日本政府は

原子力安全に関するIAEA閣僚会議に対する日本国政府の報告書

の中で、

今回の事故はシビアアクシデントに至り、原子力安全に対する国民の信頼を揺るがし、原子力に携わる者の原子力安全に対する過信を戒めるものとなった。このため、今回の事故から徹底的に教訓を汲み取ることが重要である。

と、世界に宣言しています。その教訓として、28項目の教訓を挙げています。そのため、日本国政府が示した、以下の28項目の教訓について、再稼動しようとしている原子力発電所はどのように対応するかを、誠実に説明し、実践することが再稼動の最低条件だと思います。

以下にその28項目の教訓の抜粋を記載します。

(第1の教訓のグループ)シビアアクシデント防止策の強化
(1) 地震・津波への対策の強化

深層防護の観点から、策定された設計用津波を上回る津波が施設に及ぶことによるリスクの存在を十分認識して、敷地の冠水や遡上波の破壊力の大きさを考慮しても重要な安全機能を維持できる対策を講じる。

(2) 電源の確保
空冷式ディーゼル発電機、ガスタービン発電機など多様な非常用電源の整備、電源車の配備等によって電源の多様化を図ること、環境耐性の高い配電盤等や電池の充電用発電機を整備することなどにより、緊急時の厳しい状況においても、目標として定めた長時間にわたって現場で電源を確保できるようにする。

(3) 原子炉及び格納容器の確実な冷却機能の確保
代替注水機能の多様化、注水用水源の多様化や容量の増大、空気冷却方式の導入など、長期にわたる代替の最終ヒートシンクの確保により、原子炉及び格納容器の確実な代替冷却機能を確保する。

(4) 使用済燃料プールの確実な冷却機能の確保
電源喪失時においても、使用済燃料プールの冷却を維持できるよう、自然循環冷却方式又は空気冷却方式の代替冷却機能や、代替注水機能を導入することにより、確実な冷却を確保する。

(5) アクシデントマネジメント(AM)対策の徹底
アクシデントマネジメント対策については、事業者による自主保安という取組みを改め、これを法規制上の要求にするとともに、確率論的評価手法も活用しつつ、設計要求事項の見直しも含めて、シビアアクシデントを効果的に防止できるアクシデントマネジメント対策を整備する。

(6) 複数炉立地における課題への対応
一つの発電所に複数の原子炉がある場合は、事故が起きている原子炉の事故時操作が、他の原子炉の操作と独立して行えるようにするとともに、それぞれの原子炉の工学的な独立性を確実にし、ある原子炉の事故の影響が隣接炉に及ばないようにする。併せて、号機毎に原子力安全確保の責任者を選任し、独立した事故対応が行える体制の整備などを進める。

(7) 原子力発電施設の配置等の基本設計上の考慮
今後は原子力発電施設の配置等の基本設計において、重大な事故の発生を考慮しても冷却等を確実に実施でき、かつ事故の影響の拡大を防止できる施設や建屋の適切な配置を進めることとする。その際、既存の施設については、同等の機能を有するための追加的な対策を講じる。

(8) 重要機器施設の水密性の確保
目標とする安全水準を達成する観点から、設計上の想定を超える津波や、河川に隣接立地して設計上の想定を超える洪水に襲われたような場合でも重要な安全機能を確保できるようにする。具体的には、津波や洪水の破壊力を踏まえた水密扉の設置、配管等浸水経路の遮断、排水ポンプの設置などにより、重要機器施設の水密性を確保できるようにする。

(第2の教訓のグループ)シビアアクシデントへの対応策の強化

(9) 水素爆発防止対策の強化
発生した水素を的確に逃すか減じるため、格納容器における水素対策に加えて、シビアアクシデント時に機能する原子炉建屋での可燃性ガス濃度制御系の設置、水素を外に逃すための設備の整備等の水素爆発防止対策を強化する。

(10) 格納容器ベントシステムの強化
今後は、格納容器ベントシステムの操作性の向上や独立性の確保、放射性物質除去機能の強化などにより、格納容器ベントシステムを強化する。

(11) 事故対応環境の強化
中央制御室や緊急時対策所の放射線遮へいの強化、現場での専用換気空調系の強化、交流電源によらない通信、照明等の関係設備の強化など、シビアアクシデントが発生した場合にあっても事故対応活動を継続的に実施できる事故対応環境を強化する。

(12) 事故時の放射線被ばくの管理体制の強化
事故時用に個人線量計や被ばく防護用資材を十分に備えておくこと、事故時に放射線管理の要員を拡充できる体制とすること、放射線業務従事者の被ばく測定を迅速に行うことのできる体制や設備を整備することなどにより、事故時の放射線被ばくの管理体制を強化する。
(13) シビアアクシデント対応の訓練の強化
シビアアクシデント発生時に、事故収束のための対応、発電所の内外における状況把握、住民の安全確保に必要な人材の緊急参集などを円滑に行い、関係機関が連携して機能するため、シビアアクシデント対応の訓練を強化する。

(14) 原子炉及び格納容器などの計装系の強化
シビアアクシデント発生時に十分機能する原子炉と格納容器などの計装系を強化する。

(15) 緊急対応用資機材の集中管理とレスキュー部隊の整備
過酷な環境下でも緊急時対応の支援が円滑に行えるよう、緊急対応用資機材の集中管理やこれを運用するレスキュー部隊の整備を進める。

第3の教訓のグループ)原子力災害への対応の強化

(第3の教訓のグループ)原子力災害への対応の強化
(16)大規模な自然災害と原子力事故との複合事態への対応

大規模な自然災害と原子力事故が同時に発生したような場合の対応として、適切な通信連絡手段や円滑な物資調達方法を確保できる体制・環境を整備する。また、原子力事故が長期化する事態を想定して、事故や被災対応に関する各種分野の人員の実効的な動員計画の策定などの対応を強化する。

(17) 環境モニタリングの強化
緊急時においては、国が責任をもって環境モニタリングを確実かつ計画的に実施する体制を構築する。

(18) 中央と現地の関係機関等の役割の明確化等
原子力災害対策本部を始めとする関係機関等の責任関係や役割分担の見直しと明確化、情報連絡に関する責任と役割、手段等の明確化と体制整備などを進める。

(19) 事故に関するコミュニケーションの強化
周辺住民等に対して、事故の状況や対応等に関する的確な情報提供、放射線影響等についての適切な説明などの取組みを強化する。また、事故が進行している中での情報公表について、今後のリスクも含めて示すことを情報公表の留意点として取り入れる。

(20) 各国からの支援等への対応や国際社会への情報提供の強化
事故時の国際的な対応に関して、事故対応に効果的な資機材の在庫リストを国際協力により作成しておくこと、事故時の各国のコンタクトポイントを予め明確にしておくこと、国際的な通報制度の改善を通じて情報共有の体制を強化すること、科学的根拠に基づく対応を可能にする一層迅速で正確な情報提供を行うことなど、など、国際的に効果的な対応の仕組みを国際協力を通じて構築すべく貢献する。

(21) 放射性物質放出の影響の的確な把握・予測
事故時の放出源情報が確実に得られる計測設備等を強化する。また、様々な事態に対応してSPEEDIなどを効果的に活用する計画を立てるとともに、こうしたSPEEDIの活用結果は当初から公開する。

(22) 原子力災害時の広域避難や放射線防護基準の明確化
今回の事故の経験も踏まえ、原子力災害時の広域避難の範囲や放射線防護基準の指針を明確化する取組みを強化する。

(第4の教訓のグループ)安全確保の基盤の強化
(23) 安全規制行政体制の強化

原子力安全・保安院を経済産業省から独立させ、原子力安全委員会や各省も含めて原子力安全規制行政や環境モニタリングの実施体制の見直しの検討に着手する。

(24) 法体系や基準・指針類の整備・強化
原子力安全や原子力防災に係る法体系と関係する基準・指針類の見直し・整備を進める。その際、構造信頼性の観点のみならず、システム概念の進歩を含む新しい知見に対応する観点から、既存施設の高経年化対策のあり方について再評価する。さらに、既に許認可済みの施設に対する新法令や新知見に基づく技術的な要求、すなわち、バックフィットの法規制上の位置づけを明確にする。併せて、関係するデータを提供することなどにより、IAEAの基準・指針の強化のため最大限貢献をする。

(25) 原子力安全や原子力防災に係る人材の確保
教育機関における原子力安全、原子力防災・危機管理、放射線医療などの分野の人材育成の強化に加えて、原子力事業者や規制機関などにおける人材育成活動を強化する。

(26) 安全系の独立性と多様性の確保
共通原因故障への的確な対応と安全機能の一層の信頼性向上のため、安全系の独立性や多様性の確保を強化する。

(27) リスク管理における確率論的安全評価手法(PSA)の効果的利用
今後は、不確かさに関する知見を踏まえつつ、PSAをさらに積極的かつ迅速に活用し、それに基づく効果的なアクシデントマネジメント対策を含む安全向上策を構築する。

第5の教訓のグループ)安全文化の徹底
(28) 安全文化の徹底

今後は、原子力安全の確保には深層防護の追求が不可欠であるとの原点に常に立ち戻り、原子力安全に携わる者が絶えず安全に係る専門的知識の学習を怠らず、原子力安全確保上の弱点はないか、安全性向上の余地はないかの吟味を重ねる姿勢をもつことにより、安全文化の徹底に取り組む。

僕は、今止まっている原子力発電所はもう二度と動かさないことが望ましいと思っているものの、現実問題として、必要最小限のものは動かさざるを得ないのかなとも思っています。で、あるならば、日本国政府は、自分で言った教訓を元にした安全対策を、責任を持って行うべきだと思います。

「ダッ!ダッ!脱・原発の歌/制服向上委員会」

原子力村 - Wikipedia

原発関連御用学者リスト

原発関連御用学者リスト(医学関係)

※僕のブログでは、本来趣味の内容を取り上げることにしているのですが、福島第1原発事故についての政府やマスコミの対応があまりにひどいこと、また、自分があまりに原発の問題に無関心だったことを恥じているので、僕のブログでも、微力ながら、自分の知りえた情報を伝える記事をできるだけ書くようにすることにしました。原発関連の記事のみを見る場合は、右にある「カテゴリー」の「原発事故」をクリックすると、記事をまとめて見れるので便利だと思います。

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