原発輸出の社説比較
原発輸出について、12月3日に東京新聞とナベツネ新聞(読売新聞)が社説を書いていたのですが、12月10日に毎日新聞も社説を書きましたので、この機会に3紙の社説を比較してみます。
原子力協定承認 拙速にすぎはしないか(12月10日付・毎日社説)
政府がヨルダン、ベトナム、ロシア、韓国と結んだ原子力協定が、国会で承認された。これにより、協定は来年1月にも発効し、原発輸出が可能になる。
しかし、東京電力福島第1原発の事故はまだ収束していない。原因の究明、検証もこれからだ。安全確保をめぐる十分な議論がないままでの国会承認は、あまりに拙速だといわざるを得ない。
原子力協定は、原子力関連技術や資材を輸出する際、相手国での軍事転用を防ぐために締結するもので、原発輸出の前提になる。日本は米、仏、中国、欧州原子力共同体など7カ国1機関と締結済みだ。
今回承認を得たヨルダンとベトナムには原発輸出、ロシアにはウラン濃縮の委託、韓国には原子炉部品の輸出を想定している。
国会審議で、野田佳彦首相は「日本の現状や反省も踏まえ、なお協力してほしいというなら、できることをすることは国際的な原子力安全の向上に資する」と説明した。
しかし、「安全の向上」と胸を張る根拠はあるのか。確かに、国内原発産業の技術力は高い。しかし、それだけで原発を稼働し、運営する際の安全が確保できるわけではない。
輸出先で運営を主導すると期待された東電の参画は望めない。また、事故の原因がはっきりしないままでは、安全性を訴えても説得力はあるまい。
一方で首相は、「事故の経験や教訓を国際社会と共有するのはわれわれの責務だ」とも強調した。もっともだが、共有すべきは、事故の徹底的な検証を前提にした事故防止のための知見であるはずだ。
今回の国会審議は、議案の審議入りから承認までわずか10日しかなかった。例えば、ヨルダンは地震多発国であり、原発建設予定地が内陸部にあるため大量の冷却水を確保しにくいとされるが、安全対策の議論は生煮えだった。
政府は、締結相手国での受注競争で日本企業が不利にならないよう、年内承認を急いだとの指摘もある。しかし、採決では与党内からも反対者が出た。「身内」も納得しない審議では、国民や国際社会の理解も得られまい。
政府は現在、インド、南アフリカ、トルコとも原子力協定の締結交渉を進めている。核保有国でありながら核拡散防止条約(NPT)に加盟していないインドとの交渉は、とりわけ慎重であるべきだ。
国内で「脱原発依存」を進める一方で、海外に危険や不安を輸出することがあってはならない。
そのために、政府・国会には事故の検証を踏まえ、安全をめぐる議論を深めるよう改めて求める。
衆院外務委員会が原発輸出に道を開くヨルダンなど四カ国との原子力協定案を可決した。今国会で承認される見通しだが、福島の検証も終わらぬうちに輸出では国際社会への説得力に欠ける。
東京電力福島第一原発が今なお冷温停止に至っていないにもかかわらず、野田政権は原発輸出にこだわっている。協定締結の相手国はヨルダン、ベトナム、ロシア、韓国で、核物質を輸出入する際、軍事転用を防ぐことが目的だ。衆院での質疑は国の内と外で原発政策を巧みに使い分ける姿を鮮明に映し出した。
野田佳彦首相は「福島の教訓や知見を国際社会で共有することが日本の責務」と語り、「事故後も日本の原発を求めてくる国があり、ならば最高水準の技術で協力していく」と力説した。
一方で玄葉光一郎外相は「日本は原発を新増設する状況になく、政府内で段階的な依存度引き下げを共有している」と述べている。国内の新増設には腰を引き、海外には売り込む。こうも国の内外で落差があっては、国際社会から信頼を得られるか疑わしい。
特にヨルダンは日本と同じ地震国で、原発に不可欠な冷却水の確保が難しい内陸部の乾燥地帯が予定地だ。八月の通常国会で参考人から指摘され、継続審議になったのに、政府は原発の専門家を派遣しての調査もしていない。
立地場所の周辺は、首都アンマンなどの大都市やヨルダンの半数の工場が集中しており、立地の適否すら確かめずに協定を優先させては怠慢のそしりを免れない。
輸出相手国の多くは新興国で、原発の資機材だけでなく運転・保守管理も日本に求めているが、事故が起きた際の責任の所在は明確になっていない。そのリスクを回避する「原子力損害の補完的補償に関する条約」への加盟も、福島後に慌てて検討するお粗末さだ。
原発は一基五千億~六千億円の大型商談で、人口減少で需要が縮む日本に代わって外需を取り込む新成長戦略の一環でもある。
原発メーカーの東芝、日立製作所、三菱重工業はリトアニアやトルコなどとも受注交渉を進め、政府も協定を結べば原子力ビジネスの海外展開が可能になるとの見解を示している。
日本経済の再生に輸出拡大は有効な手だてだが、首相は福島の事故の検証が道半ばなのに教訓をどう生かすというのか。安全確保があいまいでは、立ち止まることも選択肢の一つに加えるべきだ。
原子力協定 原発輸出へ国会の承認を急げ(12月3日付・読売社説)
日本とヨルダン、ベトナムとの原子力協定承認案が、衆院外務委員会でそれぞれ可決された。
両国へ原子力発電所を輸出する前提となる協定である。両国は承認手続きを終えている。日本も、今国会中の承認を実現し、早期に発効させる必要がある。
協定は、核物質の平和利用や第三国への移転制限などを明記している。発効すれば、原発輸出のほか、原子力技術の提供、専門家の育成などの協力が可能となる。
協定承認案は、先の通常国会に提出されたが、福島での原発事故後、与野党から慎重論が出たため、継続審議となっていた。
野田首相が、衆院外務委で「日本の高水準の技術がぜひ欲しい、という国がある。そうした国の原発の安全性が高まることに貢献するのは意義がある」として、早期承認を求めたのは妥当である。
ヨルダンの原発は日本・フランス連合とロシアなどが受注を争っている。ヨルダンは日本の技術を評価し、事業者選定に向けて、年内の発効を促しているという。
ベトナムは日本からの原発輸入を決めている。10月に来日したズン首相は「世界で最も安全な原発を建ててほしい」と語った。
中国などの新興国や途上国では事故後も、原発新設の機運は衰えていない。安全性に関する技術やノウハウをそうした国々に提供することは、事故を起こした日本の信頼回復につながろう。
原発を輸出すれば、結果的に、資源が乏しい国々の発展を支えることにもなる。
原発輸出は1基3000億~4000億円規模の巨大ビジネスであり、政府の成長戦略の大きな柱の一つだ。政府は、国際協力銀行の融資など万全の支援策で民間を後押ししなければならない。
さらに、海外から受注すれば、運用や補修への協力を長期間求められる公算が大きい。
日本は、今後も技術水準を高め、専門家を育成することが必要である。原発から完全に撤退する、と各国から誤解されないようにすべきだ。
衆院外務委では、韓国、ロシアとの原子力協定承認案も可決された。韓国は、日本に機材や技術の移転を求めている。
毎日新聞も東京新聞も、自己の意見と相対する見方について、丁寧に反論しているのに、対して、ナベツネ新聞(読売新聞)は、自己に都合のいい話に終止している稚拙な文章であるのが、こうして社説を比べてみるとよくわかります。やはり、ナベツネ新聞(読売新聞)は、偏った意見を読者に刷り込ませようとする劣悪な新聞で、特に青少年の健全な育成に有害な新聞だと思います。読売新聞1紙のみを購読している方は、他の新聞に変えることをオススメします。しかし、ナベツネ新聞(読売新聞)ほどの大組織ならば、優秀な人も多いはずなのに、なんでこんな劣悪な社説を書くのか不思議です。たぶん、組織の何かがおかしくなっていると思うのですが、こうして、組織が明らかにおかしい状態であると、何か悪いことが起こるのが世の常なので、自浄努力をしたほうがいいと思います。
読売グループは「名誉と信用を傷つけられた」として、清武氏に1億円の賠償を求めて告訴しているようですが、新聞記事自から、過去の名誉や信頼を貶めている状況からすると、とても読売グループの名誉や信頼に1億円の価値があるとは思えません。この辺をついていけは、清武氏側が裁判に勝つ可能性は十分あると思うのですが、はたして、どうなるでしょうか。
原発の代替エネルギーの本命はガスタービンコンバインドサイクル発電
「ダッ!ダッ!脱・原発の歌/制服向上委員会」(初披露時の映像)
※僕のブログでは、本来趣味の内容を取り上げることにしているのですが、福島第1原発事故についての政府やマスコミの対応があまりにひどいこと、また、自分があまりに原発の問題に無関心だったことを恥じているので、僕のブログでも、微力ながら、自分の知りえた情報を伝える記事をできるだけ書くようにすることにしました。原発関連の記事のみを見る場合は、右にある「カテゴリー」の「原発事故」をクリックすると、記事をまとめて見れるので便利だと思います。
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