ダブル・ファンタジーの日本盤は2種類の原盤が使用されていた
ジョンレノンのダブル・ファンタジーの日本盤が輸入原盤(輸入メタルマザーと書きましたが、ラッカー盤かメタルマスターを輸入した可能性が高いことがわかりました。)を以前の記事で書きましたが、その後の調査で、2種類の原盤が使用されていることがわかりました。このことは、コアなビートルズマニアにとっては、常識だったのかもしれませんが、少なくとも日本語で、無料でインターネット上で読める記事の中では、初めて記載される情報だと思います。ということで、以前の記事以降にわかったことを以下にまとめようと思います。
以前の記事では、レコード100円市で買った、追悼の文字が入った帯付で1980年12月にプレスされたレコードをもとに書きましたが、その後、より初期の帯付のものを数百円で購入し、ヤフオクで、帯付の見本盤が出品されたのを発見し、1万円越えを覚悟して入札に臨んだものの、幸運なことに、4千円ちょっとの額で落札でき、さらにディスクユニオンで帯なしの見本盤を千円台で購入し、さらに初期帯で最初期に近いプレスと思われる通常盤を数百円と、わりとリーズナブルな値段で色々購入することができました。せっかくなので、見本盤のレーベル写真を掲載します。
見本盤と、非売品の文字がある以外は通常盤と同じようなレーベルでした。以下に、それぞれのレコードの送り溝の情報を掲載します。なお、前回の記事では、Side2の原盤の刻印に誤りがありましたので、赤字で訂正を入れています。間違った情報を掲載してしまい、申し訳ありませんでした。
通常盤1(追悼帯)
①GHS-1-2001-JPN-SET-2
②0-Z
③2L-A-29
④3
⑤STERLING
⑥P-10948J1
⑦TO
SIDE TWO
①GHS-2-2001-RE1-JPN-SET-1
②L-A-36
③3
④STERLING
⑤P-10948J2
⑥TO
通常盤2(初期帯)
SIDE ONE
①GHS-1-2001-JPN-SET-2
②0-Z
③2L-A-21
④3
⑤STERLING
⑥P-10948J1
⑦TO
SIDE TWO
①GHS-2-2001-RE1-SET-2
②2L-A-13
③3
④STERLING
⑤P-10948J2
⑥TO
見本盤(帯つき)
SIDE ONE
①GHS-1-2001-JPN-SET-2
②0-Y
③2L-A-2
④3
⑤STERLING
⑥P-10948J1
⑦TO
SIDE TWO
①GHS-2-2001-RE1-SET-2
②2L-A-4
③3
④STERLING
⑤P-10948J2
⑥TO
見本盤(帯なし)
SIDE ONE
①GHS-1-2001-JPN-SET-2
②0-Y
③2L-A-5
④3
⑤STERLING
⑥P-10948J1
⑦TO
SIDE TWO
①GHS-2-2001-RE1-SET-2
②2L-A-4
③3
④STERLING
⑤P-10948J2
⑥TO
通常盤3(初期帯)
SIDE ONE
①GHS-1-2001-JPN-SET-1
②0-Y
③L-A-3
④3
⑤STERLING
⑥P-10948J1
⑦TO
SIDE TWO
①GHS-2-2001-RE1-JPN-SET-1
②L-A-1
③3
④STERLING
⑤P-10948J2
⑥TO
Side 1の①⑤、Side2の①④が元々原盤にあった刻印であり、これにより、STERLING社により、カッティングされた、SET-1、SET-2の2種類があることがわかります。そして、ワーナーパイオニア特有の刻印である、Side 1の③、Side2の②より、SET-1が”L”、SET-2が”2L”に対応していることがわかります。なので、やっぱりこのワーナーパイオニアの刻印は、”マスター/マザー/スタンパー”を表していると考えて間違いなさそうです。ちなみに、LED ZEPPELINのイン・スルー・ジ・アウト・ドアのときに”STROWBERRY刻印あり/なし”で見たときは、”あり”が”L”でなし”1”であり、先日の森高千里の場合は、”1”か”2”だったので、輸入原盤の場合のマスター表記はアルファベットを含んでいて、日本独自カッティングのマスター表記は数字になるという法則性がありそうです。
Side 1の②は東芝プレスの場合のプレスマークで”0-Y”が1980年11月、”0-Z”が1980年12月を表しています。以前の記事のコメントでは、”3-X”の表記の情報をいただきましたが、これは、1983年10月のプレスで、Side1が”2L-B-11”ということから、マザーがBまで進んだ11番目のスタンパーでプレスされた盤であると思われます。
Side 1の⑦、Side2の⑥の”TO”は東芝の工場でプレスされたことを表すようです。東芝はジョンレノンを所属アーティストから失ったものの、レコードのプレスは引き続き行っていたというのは、面白い事実だと思います。
そんなわけで、送り溝の情報の意味もかなりわかってきたのですが、Side 1の④、Side2の③の”3”が何を表しているのかは、今のところまったくわかりません。
今のところ最初期プレスと思われる盤は、通常盤3でSide2がスタンパー1のもののようなのですが、やっぱりダブル・ファンタジーも、最初期スタンパーは見本盤ではなく、通常盤に使用されたようです。見本盤よりも、絶対に納期が遅れてはならない重要な問屋とか量販店の分を優先してプレスしたんじゃないかとか想像してしまうのですが、こうしたことも、いずれ関係者がら真実が語られてほしいところです。
SET-1,SET-2で音の違いがあるのか、スタンパーが若い方が音がいいのか、気になることでありますが、今のところ、違うような気がしないでもないが、明確に説明できるほどの違いはないと感じています。どちらにしても、かなりの高音質であることは、間違いないと思います。現地のエンジニアがリアルタイムにカッティングした2枚の原盤を潤沢に同時期に使用して、日本の高品質な盤にプレスしたわけなので、状況的にも音がいい制作がされた盤だという理屈の説明ができると思います。実際聴いてて、最初の鐘の音なんかすごくクリアーだし、低音もしっかり鳴っているし、スターティング・オーバーの出だしのジョンの歌声の生々しさは、かなりのものだし、クリーンアップ・タイムのイントロなんて、ものすごくゾクゾクします。
ダブル・ファンタジーの日本盤は、なぜか中古盤市場で不人気で、そのおかげで、リーズナブルな価格で色々なことをわかることができたのですが、僕には、この不人気が不思議でなりません。半分の曲がオノヨーコだとしても、「スターティング・オーバー」「ウーマン」「ウォッチング・ザ・ホイールズ」といったジョンレノンのソロ曲の中でも上位にランクされるような名曲が収録されているし、音質的にも、少なくとも、ジョンレノンの日本盤の中ではもっともいい盤と言ってしまっていいと思います。そして、何より、僕のように1970年代後半にビートルズファンなった人間にとって、ジョンレノンの新作をリアルタイムで聴けた唯一のアルバムであるわけで、当時、ポールの逮捕で日本公演が中止になって、「マッカートニー2」がたいしたことない作品で落胆していた時に、ジョンレノンの復活はものすごく明るいニュースで、さらにラジオでジョンの新曲としていち早く流された「スターティング・オーバー」が物凄くいい曲だったので、物凄い高揚感を持ってこのアルバムを迎えたことは、一生忘れないと思います。(その後の落胆については、あえて触れない)
なので、僕にとっては、ダブル・ファンタジーはゲフィン・レーベルしかあり得ないので、数が少ないからといって、単なるレイトプレスのキャピタルレーベルや、東芝EMIレーベルのダブル・ファンタジーに何で高額なプレミアが付くのか、全く理解できません。
あと、僕はあまり帯には思い入れはなくて、帯なしのおかげで、極上盤質のレコードが安く買えればラッキーとさえ思っているのですが、ダブル・ファンタジーの帯にはちょっと思い入れがあって、
ダブル・ファンタジー発売直後にレコード屋で帯の裏面見たら、ジョージの新作が絶賛発売中なんて書いてあるもんだから、レコード屋でジョージの新作を探してしまった思い出があります。この帯により、発売延期になったジョージの「想いは果てなく」は「神のらくがき」とか「世界を救え」とか、邦題まで準備できていて、発売直前まで行った状態であったことがわかります。帯にこうした貴重な情報まであるのに、やっぱり、なんで、中古市場でダブル・ファンタジーの日本盤が不人気なのか不思議です。日本のビートルズファンでアナログレコードファンであれば、絶対注目すべきレコードだと思います。
ただ、やはり不人気なのはありがたく、ここまで来たらいつかは、両面”2L-A-1”のものと、”L-A-1”の盤をGETしたいなあと思っています。もしかしたら、ブックオフの100円コーナーとか、思わぬところで発見できるのではないかと期待しています。
« 森高千里のアナログシングル | トップページ | レコード100円市(2016/3) »
「The Beatles」カテゴリの記事
- 知らなかったYouTube動画シリーズ その2 Paul McCartney - Cosmically Conscious #洋楽ロック #TheBeatles(2024.03.23)
- 【Live Aid】 YoutTube 公式動画まとめ 一覧 その1 ロンドンでのライブ #LiveAid(2024.03.06)
- 【復刻記事】ポールマッカートニーライブの開演前のDJ音源が今でも無料ダウンロードできます(2024.03.02)
- ポールマッカートニー YouTube公式動画まとめ 一覧 #ポールマッカートニー #PaulMcCartney(2024.02.12)
- ジョージハリスン YouTube公式動画まとめ 一覧 #ジョージハリスン #GeorgeHarrison(2024.02.11)
「アナログレコード」カテゴリの記事
- 久々の100円レコード(2017.02.08)
- George Harrison The Vinyl Collection(2017.01.21)
- 不思議なオークション結果(2016.12.26)
- マスターサウンド盤 炎の謎(2016.12.25)
- マスターサウンド盤 ストレンジャーの謎(2016.12.24)
「輸入メタルマザー」カテゴリの記事
- マドンナの輸入メタルマザー使用 日本盤(2017.01.11)
- マスターサウンド盤 炎の謎(2016.12.25)
- マスターサウンド盤 ストレンジャーの謎(2016.12.24)
- G N' R Liesも輸入メタルマザー使用盤だった。(2016.12.08)
- ダブル・ファンタジーの日本盤は2種類の原盤が使用されていた(2016.03.17)
コメント