
マスターサウンド盤の「ストレンジャー」を買って、これは音がいいのではと期待して聴いてみると、Side1はあまりたいしたことなくて、期待外れかなと思って、Side2を聴くと、ワイドレンジで、クリアーかつ迫力があり、音の細部が聴き取りやすい、ハーフスピード・カッティング盤のイメージどおりのサウンドになっていて、どうしてこういうことが起こるのだろうと、調べてみると、Side1は通常盤のマスターを使っていて、Side2がハーフスピード・カッティング盤のマスターを使っている可能性が高いことがわかりました。そして、その後、マスターサウンド盤の「ストレンジャー」は、使用している原盤がコロコロ変わっていて、わけのわからない状況であることがわかってきましたので、現在までわかったことを記事にします。マスターサウンド盤は謎だらけなので、あまり手を出さないようにした方が賢明かもしれません。
CBSソニーのマスターサウンド盤とは、CBSソニーが技術の粋をつくした高音質と謳われて、通常盤のレコードよりもちょっと高い価格で1980年代に販売されたシリーズです。使用する原盤により、DR(デジタルレコーディング)、DM(デジタルマスタリング)、DD(ダイレクトカッティング)、HM(ハーフスピードマスター)などがあったのですが、音質的に最も期待できるDDは洋楽ロック系にはなく、洋楽ロック系の大部分は、DMだったのですが、当時として、まだ高価だったCDライクなデジタル風サウンドをレコードで聴けることは意義があったのかもしれませんが、今となっては、当時のデジタル機材では、アナログマスターをわざわざデジタルに変換したら、音が痩せるデメリットの方がデジタル化でクリアーなサウンドになるメリットよりも大きいそうだというのは、容易に想像できるので、DMのマスターサウンド盤はあまり魅力のない盤だと思っています。
そのため、洋楽ロックファンで、マスターサウンド盤で注目したくなるのは、HM盤であり、マスターサウンド盤に付属している説明書には以下のように書かれています。

ということで、期待がもてそうな説明文がかかれているのですが・・・


僕はストレンジャーのマスターサウンド盤を3枚購入してみたのですが、送り溝の部分の情報は以下のようになっていました。
・サンプル1
side1
①AL 34987 3BE
②30AP-1874A1
③C
④1BC +
⑤STERLING
①が手書き
side2
①HBL 44987-4B
②1A15
③30AP-1874B5
・サンプル2
side1
①AL 34987 3BE
②30AP-1874A1
③C
④1A2 +
⑤STERLING
①が手書き
side2
①BL 34987 4BL
②30AP-1874B1
③1B4
④STERLING(TJの手書き刻印付き)
①が手書き
・サンプル3
side1
①DHAL 34987 3K
②30AP-1874A3
③C
④1A2 +
①が手書き
side2
①BL 34987 4BL
②30AP-1874B1
③1B19
④STERLING(TJの手書き刻印付き)
①が手書き
ということで、僕が最初に聴いたのはサンプル1なのですが、これのSide2のみ機械刻印で「HBL 44987-4B」とあるのが、米版のCBSマスターサウンド盤の刻印と合致するので、これのみ音がよいと感じたのだと思います。よくわからないのが、サンプル3のside1で、これだけ、通常盤ともCBSマスターサウンド盤とも違う刻印で、実際に音を聴いても、通常盤とあまり変わらない音でした。
それで、アメリカ盤のマスターサウンド盤も安く買える機会があったので、購入しました。下の写真のように、上に青いマークが入っているのが、一般的に知られているCBSマスターサウンド盤であると思われます。



こちらの送り溝の刻印は
side1
①HAL 44987-4AR
②T1
③COLUMBIA NY
④A12
②④が手書き
side2
①HBL-44987-5C
②T1
③COLUMBIA NY
④C2
②④が手書き
ということで、やはり、「HAL」「HBL」の機械刻印が入っているものが、正しいハーフスピード・カッティング盤だと思われます。こちらのSide2の音は、CBSソニー盤のSide2と酷似した音で、Side1の音もSide2と同様のイメージの素晴らしい音でした。
なので、CBSソニー盤も全部この盤と同じメタルマザーを使えたばいいのに、と思うのですが、その後、さらに謎な米盤を発見してしまいました。

通常盤と同じようなジャケットに銀色のシールが貼られていて、

音のよさそうなアピールが書いてあるものの、この盤の送り溝の情報は、
side1
①AL 34987 3BH
②f8
③STERLING(TJの手書き刻印付き)
④△5
①②④が手書き
side2
①BL-34987-4CE
②1S
③COLUMBIA NY
④AL
②④が手書き
ということで、


通常盤の原盤(Side1のみ、テッド・ジャンセンのカッティング?)としか思えない感じで、実際の音も通常盤と変わらないものでした。中古レコード店でもたしか300円くらいの値付けだったので、高音質盤としては扱われませんでした。
こんなレコードが出されたくらいなので、米国でハーフスピードマスターの原盤の認識や管理があやふやなものになっていたのかもしれません。それで、原盤の混乱が生じたのかもしれないと思ったのですが、マニア向けのマスターサウンド盤で、こんなにコロコロとマスターが変わっていることから、CBSソニーも少なくとも原盤に問題があったことは認識していたのではないかと思われるのですが・・・
最終的にSide1もCBSマスターサウンド盤と同様の原盤を使用した盤は発売されたのか、まだ謎のままのですが、これ以上深入りするのも危険な気もしています。



上は、100円レコード市で、毎回ほとんど必ずあった日本盤の通常盤ですが、マスターサウンド盤のサンプル、1,2,3どれも、これよりは音がよかったのは確かでした。
こんな感じで、なんだかよくわからない、マスターサウンド盤なのですが、ストレンジャーの場合は、安価で入手(バーゲン時に買って数百円程度)できるので、色々確認できたのですが、もっと厄介なのはピンクフロイドの「炎(あなたがここにいてほしい)」なのですが、これについては、次回掲載したいと思います。
なお、ハーフスピードマスターを使用したと謳っている、洋楽ロック系のマスターサウンド盤は以下のものになります。
①ストレンジャー ビリージョエル
②炎(あなたがここにいてほしい) ピンクフロイド
③ディスカバリー エレクトリック・ライト・オーケストラ
④ベスト・オブ・アース・ウィンド&ファイアー アース・ウィンド&ファイアー
⑤シルク・ディグリーズ ボズ・スキャッグス
これらは、どんな原盤が使用されているのか、よく確かめてから、購入した方がよいと思います。
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